EUデータ保護規則(GDPR)ーデータ主体の権利③:訂正権(Right to rectification)

今回は、EUデータ保護規則(GDPR)のデータ主体の権利のうち、訂正権について確認します。

EU指令の下でも、データ主体のアクセス権の規定の中で、個人データの訂正権が定められていました(第12条(b)(c))。EUデータ保護規則は、第16条で独立させて訂正権を規定しています。
訂正権は、修正権とも訳されているようですが、このサイトでは、わかりやすさの観点から、訂正という用語を使用しています。

訂正権の内容

条文は次のようになっています。EUデータ保護規則の英文は次のようになっています。全文は欧州委員会のサイトに掲載されています。

Article 16  Right to rectification
The data subject shall have the right to obtain from the controller without undue delay the rectification of inaccurate personal data concerning him or her. Taking into account the purposes of the processing, the data subject shall have the right to have incomplete personal data completed, including by means of providing a supplementary statement.

つまり、データ主体は、自身に関する個人データが不正確な場合には、それを訂正することを管理者に請求する権利を有しています。処理目的を考慮に入れて、データ主体は、補足的な説明の提供などにより、不完全な個人データを完全なものにする権利を有しています。

管理者の受領者に対する連絡

個人データを取得した企業などの管理者が、第三者に個人データを開示した場合、元の個人データに訂正があったときには、開示先のデータがそのままでは困ります。この点について、EUデータ保護規則は、第19条でフォローしています(EU指令にも同様の規定がありました)。

Article 19 Notification obligation regarding rectification or erasure of personal data or restriction of processing
The controller shall communicate any rectification or erasure of personal data or restriction of processing carried out in accordance with Article 16, Article 17(1) and Article 18 to each recipient to whom the personal data have been disclosed, unless this proves impossible or involves disproportionate effort. The controller shall inform the data subject about those recipients if the data subject requests it.

つまり、管理者は、個人データの開示をした各受領者に訂正について連絡する義務を負っています。ただし、連絡が不可能または過度の困難を伴う場合には、連絡しなくてもかまいません。

また、データ主体から請求があった場合には、管理者は、データの開示をした受領者を知らせなければなりません。この点は、”EUデータ保護規則(GDPR)-管理者の義務:情報の通知(Information Notices)“でも触れました。

違反がある場合の救済

データ主体の権利に関して違反がある場合、管理者である企業などは、行政罰である過料を課される可能性があります。また、データ主体は、監督機関に対し不服を申し立てたり、司法的救済を求めることができます。
詳細は、”EUデータ保護規則(GDPR)―規則の執行と罰則の強化・不服申立てと司法的救済“の記事でまとめましたので、参考にしてください。

まとめ

1 訂正権については、EU指令とEUデータ保護規則はほぼ同様です。

2 自分の個人データが不正確であると考えた場合、データ主体は、これまで同様に管理者である企業等に訂正の請求ができます。

3 すでにEU指令の下でデータ主体による訂正権の行使に備えている企業では、EUデータ保護規則であらたに準備すべきことはないように思われます。

 

弁護士(第二東京弁護士会所属・弁護士・NY州弁護士) Gerogetown University Law Center LLM修了 早稲田大学法学部卒業 法律事務所Legal i プラスを2021年設立 Information Law, Internet Law, Intellectual Property Lawなど、iから始まる法律を中心に業務を行っています。 このサイトでは、情報法に関する情報を発信しています。5月末までは改正された個人情報保護法の記事を集中してUPする予定です。 私の詳しいプロフィールは、サイドバーのLinkedInをクリックしてご覧ください。