ぼちぼち改正個人情報保護法を読む-36条(匿名加工情報の第三者提供時の公表義務と明示義務)
個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を第三者に提供するときは、あらかじめ第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目および提供の方法を公表し、第三者に対し匿名加工情報であることを明示しなければなりません。
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改正法の条文
改正法で新設された条文は、次のように定めています。
第36条
4 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して当該匿名加工情報を第三者に提供するときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表するとともに、当該第三者に対して、当該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示しなければならない。
公表事項
公表する事項は、匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目と匿名加工情報の提供の方法です。
「匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目」の公表義務は、個人情報が一部残っていたり加工されたりした場合に生じます。
公表する事項は、細部にわたる内容ではなく、項目にとどまります。個人情報保護委員会のガイドラインの具体例は、氏名、性別、生年月日、購買履歴の個人情報を匿名加工情報に加工した場合をあげています(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン〈匿名加工情報編〉21頁)。図示すると、次のようになります。
公表の方法
「公表」という用語は、改正前の個人情報保護法の別の規定にすでに規定されていました。広く一般に自己の意思を知らせること(不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)をいいます(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)23頁)、インターネット上の公表、パンフレットの備置き・配布、ポスター等の掲示・備付けなどが含まれます。
第三者に対する明示
個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を第三者に提供するときは、あらかじめ第三者に対して、提供する情報が匿名加工情報であることを明示する義務を負っています。
「明示」とは、第三者に対し、提供する情報が匿名加工情報であることを明確に示すことをいいます(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン〈匿名加工情報編〉22頁)。
明示の方法は、電子メールを送信する方法または書面を交付する方法その他の適切な方法により行います(改正個人情報保護法施行規則22条2項)。
苦情の申出
匿名加工情報は、特定の個人が識別できないよう情報ですので、特定の個人の識別を前提とする「保有個人データ」には該当しません。開示、訂正、利用停止等の対象は保有個人データです。
したがって、加工前の元となった個人情報の本人は、匿名加工情報について開示、訂正、利用停止等の請求を行うことはできません。
匿名加工情報の第三者提供に際し個人情報保護法の義務違反があると考える場合、本人は個人情報取扱事業者または認定個人情報保護団体に対し苦情を申し出て、対応を求めることになるでしょう(法36条6項)。