ぼちぼち改正個人情報保護法を読む-36条(匿名加工情報の識別行為の禁止義務)
個人情報取扱事業者は、元となった個人情報の本人を識別するために、匿名加工情報と他の情報を照合することが禁じられています。
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改正法の条文
改正法で新設された条文は、次のように定めています。
第36条
5 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して自ら当該匿名加工情報を取り扱うに当たっては、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。
個人情報取扱事業者は、元となった個人情報の本人を識別するために、匿名加工情報と他の情報を照合することが禁じられています。匿名加工情報は、加工によって特定の個人を識別することができないようにし、復元できないようにすることによって、個人情報保護法に定義する「個人情報」から除外した新しい類型の情報です。目的外利用や本人の同意なく第三者提供を許容するなど自由な利活用が認められています。このことが大前提ですから、個人の識別のための照合は認められていません。
識別行為に当たる例
識別行為に当たる例として、個人情報保護委員会のガイドラインは次の例をあげています(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン〈匿名加工情報編〉23頁)。
- 保有する個人情報と匿名加工情報について、共通する記述等を選別してこれらを照合すること
- 自ら作成した匿名加工情報を、その匿名加工情報の作成の元となった個人情報と照合すること
識別行為に当たらない例
識別行為に当たらない例として、個人情報保護委員会のガイドラインは次の例をあげています(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン〈匿名加工情報編〉23頁)。
- 匿名加工情報を作成する際に個人情報から削除した記述等、個人識別符号、加工方法等情報をそのまま保有し続けること
- 複数の匿名加工方法を組み合わせて統計情報を作成すること
- 匿名加工情報を個人と関係ない情報(例:気象情報、交通情報、金融商品等の取引高)とともに傾向を統計的に分析すること
苦情の申出
匿名加工情報は、「個人情報」ではありませんので、個人情報取扱事業者による識別行為の禁止について違反の可能性があると思われる場合であっても、元となった個人情報の本人が開示、訂正、利用停止等を請求することはできません。
この場合の対処方法は、事業者や認定個人情報保護団体への苦情の申出となるでしょう(法36条6項)。