ぼちぼち改正個人情報保護法を読む-36条(匿名加工情報の安全管理措置・苦情処理その他適正な取扱いを確保する努力義務)
個人情報取扱事業者は、匿名加工情報の安全管理措置を講じるよう努めなければなりません。苦情処理その他の匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じる努力義務も負っています。そして、これらの措置の内容を公表するよう努めなければなりません。
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改正法の条文
改正法で新設された条文は、次のように定めています。
第36条
6 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、当該匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、当該匿名加工情報の作成その他の取扱いに関する苦情の処理その他の当該匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。
個人情報に関する義務と異なり、努力義務となっています。
個人情報と同様の安全管理措置?
個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成した場合、匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じるよう努めなければなりません。個人情報についても安全管理措置義務があります。しかし、匿名加工情報については、個人情報と同程度の安全管理措置を講じることが求められているわけではありません(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン〈匿名加工情報編〉18頁)。
なぜなら、匿名加工情報は、特定の個人が識別できないようになっているからです。仮に漏えいがあったとしても、個人情報と比較すると直ちに個人の権利利益が侵害されるおそれがないといえるからです。
どのような安全管理措置を講じるかについて、個人情報保護委員会のガイドラインは、個人情報に関する安全管理、従業者の監督、委託先の監督を参考にすることも考えられると記載しています(匿名加工情報編18頁)。残念ながら、ガイドラインには具体的な措置については書かれていません。
それは、事業の性質、匿名加工情報の取扱状況、取り扱う匿名加工情報の性質、量等に応じて、講じるべき措置が異なってくるからと思われます。今後、認定個人情報保護団体の個人情報保護指針での明確化も期待されるところでしょう。
ガイドラインが注意を呼びかけている点は、匿名加工情報について、それを取り扱う人物が匿名加工情報であることが一見して明らかな状態にしておくことです。
これは、匿名加工情報については、個人情報取扱事業者が識別行為の禁止義務を負っていることから、匿名加工情報を取り扱う者が不適正な取扱いをすることがないよう防止するためです。
苦情処理
個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、当該匿名加工情報の作成その他の取扱いに関する苦情の処理のために必要な措置を講じるよう努めなければなりません。
この苦情処理についても、個人情報保護委員会のガイドラインは多くを語っていません。安全管理措置と同様に、事業の性質、匿名加工情報の取扱状況、取り扱う匿名加工情報の性質、量等に応じて検討することになります。
顧客の中には、匿名加工情報が何であるかを知らない方も多いはずです。元は自分の個人情報であったのに、それが自由に利活用されることについて疑問を持つ方もあるかもしれません。そのためたとえ匿名加工情報の作成その他の取扱いが適切になされている場合であっても、苦情の申出があるかもしれません。個人情報に関する取扱いと同様に、苦情に丁寧に対応する必要があります。