取材源の秘匿―NHK記者証言拒絶事件を読む

憲法21条をめぐる参考となる裁判例を少しずつサイトにアップすることにしました。
まずは取材源の秘匿からです。

取材源の秘匿は重要な職業倫理

一般に、取材源の秘匿は、報道関係者が守るべき重要な職業倫理であるとされている。たとえば、読売新聞と朝日新聞のウェブサイトには、記者行動規範として次のように書いてある。

読売新聞「情報源の秘匿は、最も重い倫理的責務であり、公開を求められても、本人の同意がない限り開示してはならない。また、オフレコの約束は、厳守しなければならない。」

朝日新聞「情報提供者に対して情報源の秘匿を約束したとき、または秘匿を前提で情報提供を受けたとき、それを守ることは、報道に携わる者の基本的な倫理である。秘匿が解除されるのは、原則として情報提供者が同意した場合だけである。」

テレビも同様の立場を取っている。日本放送協会(NHK)は、「放送倫理の確立に向けて」(放送現場の倫理に関する委員会)で、「部外者に対する取材源の秘匿は、取材する者の最も守らなければならない職業倫理の一つである。この保証がなければ、何人といえども真実を言わなくなり、取材が成立しなくなる。」と表明し、NHK放送ガイドライン2015の「4 取材・制作の基本ルール」で取材源の秘匿について、次のように記載している。

○ 取材源の秘匿は、報道機関が長い期間をかけて培ってきた職業倫理の一つである。

○ 重要な情報は、時により提供者や取材協力者の名前を秘すことを条件にしなければ入手できないことがあり、秘匿を条件に得た取材源は第三者に明かしてはならない。この保証がなければ、取材相手は真実を話さなくなり、真実の究明によって国民の知る権利に応えることができなくなることを常に忘れてはならない。

民放では、番組制作のガイドラインをウェブサイト上で公開している会社はそれほど多くはないが、取材源の秘匿は自明のこととして共有されているものと思われる。

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