ぼちぼち改正個人情報保護法を読む-利活用オッケー!情報と取扱い注意!情報

匿名加工情報とは

匿名加工情報は、ざっくりいえば「利活用OK!」情報です。なぜ利活用がOKなのかといえば、特定の個人が識別されないようにし、かつ元の個人情報に復元してはならない情報なので、個人の権利利益の侵害が低いと考えられるからです。

ただし忘れてはならないことがあります。

一つは、個人情報を匿名加工情報にしても、個人に関する情報であることには変わりはないという点です。

個人に関する情報と個人情報とは違うの?と疑問に思われる方がおられるかもしれません。
個人情報は個人に関する情報の中に含まれる概念ですが、個人に関する情報とイコールではありません。

参考記事

 

要配慮個人情報も匿名加工情報に加工可

もう一つの注意点は、要配慮個人情報も匿名加工情報に加工できる点です。
要配慮個人情報は、簡単に言ってしまえば「取扱い注意!」情報です。第三者提供には、原則として本人の同意が必要です。

匿名加工情報が規定された背景には、個人情報の保護を図りつつ、新産業、新サービスの創出など、日本の成長戦略を強力に推し進めていく考えがあるわけですが、その利活用の具体例の一つとして、「医療機関が保有する医療情報を活用した創薬や臨床分野を発展させる」ことがあげられていました(第189回衆議院内閣委員会議録第4号4頁・平成27年5月8日山口俊一国務大臣答弁/同参議院内閣委員会議録第10号2頁・平成27年5月28日向井治紀政府参考人答弁)。要配慮個人情報も匿名加工情報に加工できることが前提なのです。
医療分野では以前から特定の個人を識別できないようにした情報を研究に利用することがありましたから、匿名加工情報としての利活用が明確になったともいえるかもしれません。

ところで、医療情報の中には要配慮個人情報である病歴が必然的に入ることが多いと思われますので、適正に匿名加工情報を作成し、それを復元することを禁止しておかなければ、本人の同意なく第三者に提供された後に、識別されて元の個人情報が復元できることになります。要配慮個人情報という類型を作り、他の個人情報より厳しい規制をかけたことが潜脱されてしまわないためにも、匿名加工情報において復元が禁じられていることは大きな意味があると思われます。

まとめ

以上をまとめて図にしてみました。分かりやすくなったでしょうか?

ぼちぼち改正個人情報保護法を読む-2条(定義:要配慮個人情報)

「要配慮個人情報」とは、思想、信条等の個人情報や、人種、犯罪歴、病歴等の不当な差別や偏見の原因になりうる個人情報をいいます。改正法で新設された規定です。
諸外国の法制にも同様の規定があり、機微情報、センシティブ情報、特別範疇データなどと呼ばれています。

改正法の条文

さあ、条文を見てみましょう。

(定義)
第2条
3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして 政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

 

個人情報の移転のグローバル化と要配慮個人情報

日本の個人情報保護条例では、要配慮個人情報の収集を制限する規定を設けているものが数多く見られます(たとえば東京都個人情報の保護に関する条例4条2項、大阪府個人情報保護条例7条5項)。

地方自治体の全体の傾向については、総務省の資料によると、要配慮個人情報の収集または記録が禁止または制限している都道府県は44あり、全体の93.6%にのぼります。市町村レベルでは、1,676で、全体の96.2%となっています。この資料は、2016年11月21日と最近の資料ですが、改正前の個人情報保護法が制定された時点であっても、約6割の自治体が要配慮個人情報について取扱いを制限する規定を設けていました。
他方、改正前の個人情報保護法の立法の際には規定は置かれませんでした。この経緯については、最後に参考のために書くことにします。 続きを読む →